分析報告書サンプル - 大学・専門学校向け授業評価アンケート


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分析

授業改善に向けて踏むべき手順を結果分析を通してご提案

この授業を受けて対象や関連することがらに興味や関心が湧きましたか?

 対象への興味・関心を高めることは、教育活動の大切な目標の一つです。しかしながら、授業担当者からの直接的な働きかけが効果を得ることが期待しにくい部分です。興味を引きそうな話題を用意しても想定通りの反応が返る保証はありません。むしろ学生の側では、授業者が想定する興味領域と自らのそれとの乖離を感じ取って、対象から遠ざかろうとする動機さえ生じさせることすらあります。

これまでに蓄積された数万件のデータ(上図参照)(※1)では、学んだ事柄を用いて初見の課題を自ら解決できた経験を与えることが興味・関心を高めるということが示されています。学生にとって達成の自己検証が可能な課題は、授業の到達目標でもあります。授業が終わるごとに、あるいは履修完了時点で学生が「解答」を作るべき課題を提示することが、改善に大きく寄与します。
定性的な目標記述、たとえば「中国の歴史やアジアの文化の大きな流れを理解し、歴史と文化が自然条件とどのように関係したかを知る」とい文言で目標を提示された場合、当該領域全体の理解形成の中途過程にある学生が、自らの理解・知識を以って十分であるかどうか判断するのは困難です。これに対して、解答を作る課題は、採点すなわち充足要件との乖離を認識する場面を学生に提供する点に大きな利点があります。目標が目標であるための要件である「検証可能性」を課題を提供することで担保するという発想です。
但し、課題の選び方、与え方には十分な配慮が必要です。選び方のポイントは、学生自身による達成が可能であることです。学生の理解力、基礎知識の程度が多岐に亘るため、すべての学生に達成可能な課題を作るのは困難ですが、予め用意した課題から逆算して授業を設計されては如何でしょうか。課題の解決に必要な思考とプロセスは授業で余さず扱うことに加え、不足する資料やデータはプリントやWEB/メール添付ファイルなどで配布することを徹底することで、目標の達成可能性を高めている事例(※2)があります。それでも基礎学力の決定的な欠落で授業が理解できない学生も居るかもしれません。この場合には、履修開始前または直後にプレースメントテストを行い、必要な学生に対して補強のための課題を与えるなどの措置を講じなければなりません。
また同様に、課題のボリュームについても配慮が必要です。短時間で完了できるものから徐々に本格的なものに移行することが、学生に放棄させないための要件です。近年の学生気質として、一定以上の努力を要するものは回避し、出来そうなものには食いつくという傾向は、先生方もお感じになっていると思いますが、高等学校や大学受験予備校での調査はこの印象を裏付ける結果を示しています。小さな課題であってもそれを達成することが出来たという直接経験は、学生に達成感と自己有能感を与え、対象への積極的な関与への意識を強化するものとお考えください。

DCIの授業評価分析の強み!
  • ※1:多年に亘る授業アンケート受託実績の中で蓄積してきたデータを活かし、妥当性の高い分析と
       改善提案を構築します。
  • ※2:後期中等教育移行の教育現場を研究する中で知りえた授業実践例から、範とすべきモデルを
       抽出してご紹介します。


板書やプリント類は見やすく整理されていると感じましたか? 教員による講義・説明は十分に理解できましたか?

 左のグラフは、質問6と質問7の前回比較(変化)における相関を取ったものです。横方向への分布の広さが示す通り、教具の使い方は授業者の心掛け次第で大きく変化します。前回に比べて10ポイント以上の改善を果たした事例が数多くありました。これに対して、縦方向は主として言語的手段による講義についてその内容が理解できたかが問われています。
言語表現の技術は、長年の蓄積・経験によって獲得されたものであることを鑑みると、前回評価からのわずか数ヶ月で大きな改善は見込めません(下表参照)。しかしながら、教具の使い方を工夫することで、講義内容理解は大きく改善(両者の相関は0.814に達します)しています。

 視覚的な情報が、言語情報の欠落を補完して理解を助けたという見方ができますが、改善に繋がった要因はこれに留まりません。教員による説明を理解するには、与えられている情報を既得知識と照らして分解・再構成することが求められますが、その分解に用いる知識の欠落が理解を妨げる最大要因です。この障害除去に有効なのが、板書などを通じて、利用すべき知識を固定しておくことです。
学生にとって参照手段が常に用意されていることを意味し、説明が次に進んだときには、前段での説明が板書に残されていれば、それを確認しながらさらに理解を積み上げることが出来るということです。

 口頭伝達情報は、時間の経過とともに消失します。これを固定することが板書の役割であり、この改善なくして説明や講義はわかりやすいものとはならないとお考え下さい。説明・講義で触れたことを、全体構造の中での位置を明確にした上で黒板に書きとめていく、これを心掛けるだけで学生の理解は飛躍的に高まります。

 わかりやすさは、学生の課題解決力を育む必要条件(右図参照)です。「説明等のわかりやすさ」「課題解決力の実感」とも、目標値は75ポイント(※3)です。前者で目標値に達しない状態で、後者が目標を超えた事例は僅かに一例です。課題解決力の獲得を実感できない授業では興味・関心が引き出されないことは別項で触れたとおりであり、まずは、板書を主とする教具の使い方を工夫し、わかりやすさを担保することが教壇に立つすべての指導者の責務と考えることができそうです。
 また、わかりやすさが目標に達しても、課題解決力の獲得を実感させることが出来たのは39%に留まりました。ここで鍵になるのは「思考のきかっけとなる指導者からの問い掛け」です。
※3:得点を100分率に換算した値

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  • 当該回次の評価結果だけでなく、前回比較における項目間の連関を見ることで、改善への展望と意義を示します。

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